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世界の鬼その2

背広鬼

イングランドのとある山に大男が住んでいた。
力持ちだが醜い容姿であったため、
人目につかぬように生きていた。
しかし男は常に貴族の暮らしに憧れていて
いつか自分も宮仕えしたいと考えていたのだった。

ある日、意を決して領主の城に出向き、
衛兵に宮仕えしたい旨を伝えた。
最初こそ衛兵はこの怪しい醜男に取り合わなかったが
官吏に取り次いでくれるまで此処を一歩も動かないと言い
座り込んでしまった。

いつか諦めて帰るものだと思っていたが
1日、2日3日経っても男はそこから動かない。
ついに、見かねたとある官吏が男に話しかけた。

「そなた、宮仕えがしたいと申したな。
 考えてやらぬこともないが条件がある。
 お前のその汚い身なりだ。それを何とかしないことには話しにならぬ。
 そうだな…虎を1000匹狩ってその毛皮で背広を作るのだ。
 お前のその大きな体に合う背広をな。」

勿論官吏の出任せではあったが、大男はその言葉を聴くが早いか
虎を狩るために山のほうへ全力で走っていった。
自分の夢を叶えるため、男は虎を狩る。
陽射しが照りつける夏の日も、空気さえも凍てつく冬の日も
男は虎を狩り続けた。

何年が過ぎただろうか。
とうとう夢を叶える日が来た。
最後の虎をしとめたのだ。
身の回りの道具や衣服を自分で作っていた男に
背広を作ることなど容易いことであった。
慣れた手つきで仕立て上げる。
そして夜が明ける頃には絨毯と見間違えるほど大きな、
大男の体にぴったり合った、一張羅が完成したのだ。
男は早速袖を通し、意気揚々と領主の城へ向かった。

ふもとの村では夏至の祭りの準備で賑わっていた。
誰もがせわしなく大通を行きかっている。
ある若者がその幸福な空気におよそ相応しくない
異形の影をみた。
「お、鬼だ!」
若者の叫びに呼応するかの如く、村人たちは
その異形に目を囚われた。誰もが恐怖を口にする。
鬼だ!鬼が出た!
その異形の鬼とは、大男のことだった。
鬼を追い払え!ある勇敢な若者は石つぶてを手に叫ぶ。
拳ほどもある石がヒュンと空を切り、男の額に命中する。
温かな感触を覚える。血が額からつつっと流れ出す。
勇敢な若者に続けと、村人たちは石で大男を打つ。
何が起こったのか?
官吏の言うとおり仕立て上げた背広に身を包んだ男は
最早貴族の仲間入りを果たした気分でいた。
それが何故?何故おれが鬼と呼ばれるのだ?
男は走った。とにかくこの場を離れなければいずれ殺されてしまう。


やがて、男は泉のほとりに呆然と立っていた。
男は見てしまったのだ。
鏡のように静かに水をたたえる泉に映る恐ろしい鬼の姿を。
己の出世欲のために無益な殺生を繰り返した男は
自分でも気づかぬうちに鬼になっていたのだ。

俺は、俺は鬼になってしまった。
男は大声で泣いた。
己が所業を悔い、男はなき続ける。
陽射しが照りつける夏の日も、空気さえも凍てつく冬の日も
男はなき続けた。

泉が涙で元の3倍もの大きさになったある日のこと
優しく温かな光が男を包み込む。
ずっと長い間、なき続ける男を見守っていた者がいた。
お釈迦様である。
お釈迦様は語りかける。
「私はお前のことをずっと見続けていました。
 もしも救いを求めるのであれば、私が今から言うことを良くお聞きなさい。
 お前が殺めてきた虎を供養するために祠を作りなさい。
 その毛皮で作った背広が納められるほどの祠です。
 そしてお前が殺めた虎の数と同じ
 1000日間、絶えず供養し続けるのです。」

男は最早自身は死んだものと考えていた。
ならば、己のためではなく俺が殺した
虎のために生きて行くのも悪くはない。
男は早速お釈迦様の言われたとおり祠を建て
そこに背広を納め、虎を供養した。
禊のため、供養し続ける。
陽射しが照りつける夏の日も、空気さえも凍てつく冬の日も
男は供養を続けた。

999日目の夜、いつもと同じように供養をしていると、
男は背後に気配を感じた。
巨大な虎、それも男よりも大きな。
赤く目を光らせ、唸り声をあげこちらを凝視し
じわじわと距離を詰める。
しかし男は物怖じすることなく
虎のほうを向き直り、どしりと腰を下ろす。

「虎よ。おおかたお前はおれを食いに来たのであろう。
 だが待って欲しい。たったの1日でいい。
 おれは今日この日まで
 おれがこの手で殺してきたお前の仲間を供養し続けてきた。
 それもあと1日で終わる。それが終わるまで待って欲しい。
 それまでは死んでも死に切れぬ。
 頼む虎よ。この願いだけ聞き届けてもらったら
 あとはお前の好きにしていい。」

言葉が通じたのであろうか、虎がその場に座り込んだのを見て
男は再び祠のほうを向き、供養を続ける。
そして夜が明け、日が沈み男は最後の供養を終えた。
「虎よ、待たせたな。おれを食いたくば食うがいい。
 おれがなすべきことは今終わったのだ。」
そう言いながら後ろを振り向くが、そこに既に虎はおらず、
代わりにいつかと同じようにお釈迦様が柔らかな笑みをたたえ立っていた。

「私はお前をずっと見ていました。よく私の言いつけを守り
 務めを果たしましたね。お前は救われたのです。
 あの泉に行き、自分の姿を御覧なさい。」

お釈迦様に言われたとおり泉に自らの姿を映すと、
そこにいたのは醜い鬼ではなく、
光り輝くように真っ白な毛を持った虎であった。
男はその罪を許され、生まれ変わったのだ。
気高いその獣が歓喜の咆哮を上げると
お釈迦様と共に天へ昇っていったという。
その場所はやがてWhite Tiger池と呼ばれるようになったそうだ。

イングランドに伝わる鬼にまつわる古いお話。
思ったより長くなった。
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